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国際HC1の日本人青年とGOLF真剣勝負

今年の初夏のことでした。ケロウナでゴルフの相手をして欲しいという依頼をメールで受けました。ケロウナはご承知の通りカナダで一番のゴルフ天国の町で す。
毎年、ゴルフを目的とされた方々が日本から数多く来られ、一緒にラウンドすることが当たり前になっている私は迷うことなくこの依頼を受けました。依頼者の 息子さんがケロウナでゴルフをしたいということでした。

わざわざゴルフをするためにケロウナにやって来て、しかも私に勝負を挑むとは?
一体どんな人なのだろうか?

数日後、届いたメールに息子さんの簡単なプロフィールが書かれていました。

・日本人青年19歳
・中学生からアメリカ留学中で現在アメリカ在住
・アメリカの高校でゴルフ部のキャプテン
・国際ナショナルHC1
・平均ドライバー飛距離300ヤード
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「・・・・・・・・・」 目が点になるとは、このこと です。
とと姉ちゃん風に言うなら、「どうしたもんじゃろのーーー」って感じです。

「これはマズい、、、」 
私は言い知れぬ不安と焦りを覚え、その日から悪夢にうなされるようになりました。毎夜見る夢に は実にリアリティな光景が映し出されていました。

300ヤードを飛ばす青年の打球と惨めにスライスしていく私の打球、、、
青空を切り裂くような青年のアイアンショットとチョロの私、、、
プロ並みに綺麗にターフを取る青年と畑を耕すかのような私のダフり、、、

「ひぃぃぃ〜〜〜!」 全身冷や汗で何度も夜中に目が覚めました。「夢か、、、夢で良かった、、、」
6月、7月、私は人が変わったように練習に打ち込みました。来る日も来る日も、この青年との対戦の日に照準を合わせて練習に励みました。しかし、い くら練習したところでそのレベル差は歴然としています。
今年の高校野球に例えるなら、青年は履正社とか横浜高校、あるいは優勝した作新学院です。一方の私は松商学園(私は松商学園野球部OB)です。

松商学園 VS 履正社
松商学園 VS 横浜
松商学園 VS 作新学院

どう考えても勝ち目はありません。マスコミ(私の妻)は、10対0の5回コールドで松商学園がボロ負けすると予想していました。青年と私の対戦日は8月 26日に決まっていました。場所はオカナガンGCベアコース。15年前からの私のホームコースです。青年は初めてラウンドするコースになりますから、まさ に私がホーム、青年はアウェイです。地の利は私に有利です。しかし、これだけではまだ足りません。

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         チアリーダー、ちびっこ応援団長、19歳の青年
私はあらゆる策を練り、苦肉の策として私設応援団を急遽仕立てることにしました。応援団のイメージは全国 最強の習志野高校吹奏楽部です。
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急造仕立ての応援団長とチアリーダーに習志野高校の応援と同じイメージで私を応援するように命じ、そして前夜まで厳しい特 訓が続いて いました。
参考映 像:習志野高校吹奏楽部の強烈な応援 y

8月26日。いよいよ決戦の日がやってきました。私は緊張のあまりほとんど眠れませんでした。ちびっこ応 援団長とチアリーダーも連日の厳しい応援練習で疲労がピークに達していました。

緊張で体が動かない私は、追い打ちをかけられるかのように残酷な光景を見せつけられました。スタート前の練習レンジで青年は恐ろしい打球を軽々と打ち続け ていました。
「・・・・」私は呆然と立ち尽くしていました。

「あら?滝澤さんは練習しないんですか?」 チアリーダーは無邪気に問いかけてきます。

「ぼ、ぼ、僕は練習しないんだよねーーー」って、とてもこの青年の隣で練習できる訳がありません。高校野球に例えると試合前の 相手チームのシートノックを見ただけで完全にビビっているというような感じです。
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試合開始のサイレンが鳴りま した。先攻の青年が軽々と振り抜いたボールは確実にフェアウェイ。300ヤードを越えていることは間違いありませんでした。

「ど、ど、どうしよう、、、」膝が震えつつも私はなんとか打席に立ちました。背後ではちびっこ応援団長とチアリーダーが習志野 高校のように声援を出し続けてくれていました。

高校野球はやってみなければ分からないものです。私のティーショットは100回打って1回出るかどうか?くらいの素晴らしいショットでした。試合は初回か ら動きました。このホールは私がなんとバーディ。青年はダブルボギー。
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(ス タート1番ホールPAR4のティーショット)

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      (この日、神がかっていた私)
高校野球に例えるなら、立ち上がりの相手投手を攻めて、あっという間に3点先制したという感じで「レッツゴー!習志野」の美爆音 が鳴りまくり状態です。
ち びっこ応援団長もチアリーダーも大喜びです。2番はお互いパー。3番もお互いパー。青年は淡々と確実に鋭いショットを続けています。
一方の私は「これはまぐれだ。ボロが出ないように気をつけよう」と、慎重にラウンドを続けました。まるで外角低めギリギリに投げ続ける投手のように、相手 に手痛い長打を打たれないよう慎重になっていました。
この日の私は神がかっていたと思います。まったくショットが乱れません。そして迎えた9番ホールのPAR5はお互い3オンしてバーディーパットを迎えまし た。お互い同じボール位置です。カップまで距離約4メートル。下りの難しいパットです。
私はアドレスに入り、ボールの後にパターヘッドを置き、「ふぅ〜〜っ」と息を吐き、そして少しだけ強くグリップを握り、ゆっくりテイクバックに入りまし た、、、次の瞬間、、、

「今、滝澤さんが1点勝ってますよーー!」

スコア記入係を兼ねていたチアリーダーが、私がパットをする直前に大きな声で叫びました。その声に手先が反応してしまい、ボールを打ってしまいました。

「あっ!ヤバい!」

ボールはチアリーダーのように無邪気に転 がって行きました。
ところが、そのボールはなんとカップ インし、本日2つ目のバーディー。やっぱりこの日は神がかっていました。
青年はバーディーパットを外したため、前半終わって37−39で私が2点のリード! 信じられません。
高校野球に例えると、5回終了時点で2点差で松商学園がリードしているという展開です。5回コールド負けにならずに済みました。

松商学園イケてる! 松商学園勝てるかも?

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(私と青年のゴルフバック運搬も担当し大忙しだったチアリーダー)    

習志野のチアは青色だとあれほど言ったのにご覧の通りオレンジ。    
オレンジはライバル校の木更津総合のチアのカラーです。        
本当に無邪気なチアリーダーです。                  

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     (強烈なショットを打ち続ける青年)

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10番ホールもお互いパー。2点リードのままです。
「ようし!あと残り8ホールだ。逃げ切るぞ!」

ところが、この直後、信じられない悪夢が起こりました。

「ボクねぇ、N君(青年のこと)を応援するよ!」


まさかの、ちびっこ応援団長の裏切りでした。

「ダメだよ!僕を応援して!」
「だってN君が負けてるから可哀想。応援しなくちゃ!」
「そりゃないよ!話が違うじゃないか!」
「う〜〜ん、やっぱりN君を応援する!」

「裏切り者!」

「滝澤さん、子供相手に何を本気になっているんですか?」
私とちびっこ応援団長の押し問答に半ば呆れ果てたチアリーダーが間に入ってくれたものの、応援団長の決意は固く、あろうことかチアリーダーも一緒になって 私を見捨てて行ったのです。
高校野球に例えると、試合の途中に1塁側アルプススタンドから相手側の3塁側アルプススタンドに応援団が引っ越して行くようなものです。高校野球ではあり 得ない珍事です。


せっかく習志野高校をイメージした応援団を結成したのに、まさかのこの展開によって私は少しずつリズムが 崩れていきました。前半、不思議なくらい入っていたパットが入らなくなり、反対に応援を背にした青年は本来の実力を見せつけてきました。

高校野球は7回からが本当の実力が出ると言われますが、この日の戦いもその通りの展開になっていきました。松商学園の投手はマウンド上でヘロヘロ状態で す。相手は果敢に攻撃を仕掛けてきます。

そして17番ホールでついに同点に追いつかれました。
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(このフォーム!まさにプロ!)         
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同点のまま18番ホールへ。
しかし、この日の私は神がかっていました。幸運が訪れたのです。

「あのねぇ、同点になったから滝澤さんを応援する!」


ちびっこ応援団長の鶴の一声でチアリーダーも一緒に1塁側アルプススタンドに戻ってきてくれたのです。
前夜まで厳しい特訓を重ねて応援練習をしてきた応援団長とチアリーダーの声援が激しさを増してきました。それは習志野高校吹奏楽部そのものでし た。

18番ホールPAR5。
私のドライバーショットは100回に一度出るか、出ないか?の素晴しい当たり!
「ええっ!ここまで飛んだか!」と自分でもビックリでした。
290ヤードは来ていました。やはり応援があると無いとでは違います。

高校野球に例えると、9回裏の攻撃で先頭打者が3塁打を放ち、無死3塁という絶好のサヨナラ勝ちのチャンスです。

勝てる! 松商学園イケてる!


しかし、甲子園はそんなに甘いものではありません。
青年は軽々と2打目をグリーン横に運びましたが、私の2打目は痛恨のミス。右の松林の中に吸い込まれて行きました。
まさに無死3塁からのスクイズ失敗ってヤツです。

最終18番ホールは、3オン2パットの青年に対し、5オン1パットの私。
1点差で逆転負けを喫することになりました。

多くのマスコミが松商学園の大敗を予想した試合でしたが、この試合のハイライトは随所にあったと思います。初回にいきなりバーディーを取ったことや、 100回に1度のドライバーショットが3発も出たこと。神がかり的なパットが何度もあったこと。
途中、応援団長とチアリーダーの裏切りにあうものの、最終回にはまた戻って来てくれたこと。

一方の青年は初めてのコースだったこと、相手側の応援団長とチアリーダーによる習志野高校的な応援攻撃に面食ら いながらも、しかし、さすがの 腕前を見事に披露してくれたこと。お見事でした!

敗れたとは言え、私は精一杯の奮闘をしましたので大満足でしたが、
ちびっこ応援団長は悔しさで一杯。
チアリーダーは泣き崩れていました。

まさかの大番狂わせか?と最後まで健闘した松商学園は爽やかな笑顔を残しつつも校歌を歌うことができませでした。

N君(青年)、ちびっこ応援団長、チアリーダー、お疲れさまでした。





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編集・制作 / 滝澤修